現在の円安は「〇〇な円安」- 金融のプロが教える“経済の見方” 第1回

急激に進む円安

4月13日、対米ドル円相場は約20年ぶりに126円台をつけました。これは同日午後に日本銀行黒田総裁が「強力な金融緩和を粘り強く継続する」と発言した事をきっかけにしたものです。

対米ドルの円相場は、今年に入ってから3月上旬頃まで1ドル=115円前後の水準で推移していましたが、3月中旬以降ドル買い円売りの動きが加速し、3月28日に125円台を一時つけ半月ほどで10円程度円安が進みました。その後も円安傾向は変わらず、4月11日に再度125円台をつけ13日の動きとなっています。

1年間の円ドル相場の推移
引用元:Bloomberg

円安の動きを受け、4月12日鈴木俊一財務相は「最近の円安進行を含め、為替動向や日本経済への影響をしっかりと緊張感を持って注視する。為替の安定が重要。特に急激な円高は望ましくない」との考えを示しています。

円安進行にはいくつかの理由が考えられますが、今回の契機となったのは、まず4月6日に3月のFOMC(米連邦公開市場委員会)議事録が公開され、FRB(米連邦準備理事会)が5月から月間950億ドルの資産圧縮を開始すると合意がなされ、米国の金融引締めがさらに強化される見通しとなった事があります。次に日本銀行が3月28日に発表し31日まで実施した「国債の指値オペ」により大規模な金融緩和の姿勢が継続されると市場が認識したことがあります。この2点により日米の金利差が継続的にさらに拡大していくと見られました。

良い円安、悪い円安

良い円安、悪い円安と言われることがあります。

良い円安は、輸出企業にとって海外での価格競争力が高まり収益が改善すると考えられます。

続いて悪い円安について考えてみると、日本は小麦、大豆などの食糧や石油、天然ガスなどのエネルギーなどを輸入しています。これらの輸入が外貨建て取引の場合、円安になると輸入コストが上昇することになり、企業は収益が圧迫されることになります。

もし、このコスト上昇分を価格に転嫁すると消費への影響も考えられます。すでに多くの食品メーカーなどから商品値上げの発表が相次いでいますね。

今回はロシアによるウクライナ侵攻もあり、小麦、大豆などの食糧不足や石油、天然ガスなどのエネルギー不足が発生し、その点からも値上がりが必至となっていますので、円安により物価の上昇が強くなると思われます。そのため、今回の円安は「特に悪い円安」となりそうです。

円安は続くのか?

今回の円安の契機として日米金利差を挙げましたが、円安に向かう大きな要因として日本の経常収支の変化が上げられます。

日本は長年、貿易黒字をベースに経常収支黒字国として信任を高め、「債権国」としての地位を築いてきました。しかし、2011年3月11日に起きた東日本大震災以降、火力発電に使う石油および天然ガスの輸入増などにより貿易黒字を失うことになりました。またエネルギー価格の上昇により今年の1月には史上2番目の経常収支赤字となっています。

ウクライナ侵攻の状況が変わらない限り、エネルギー価格の水準は下がらないと見られますので、経常収支赤字の状況は続いていくと考えられます。またこのタイミングで、改めて中国、ロシア、北朝鮮に囲まれた日本の地政学リスクもクローズアップされており、「日本売り」「円売り」が為替市場のテーマになってしまうかもしれません。

日本の国としての体質を大きく変えない限り、折に触れ「円売り」が発生すると思われ、円安の傾向は基調として続いていくと考えられます。

円安が落ち着く水準・メドは?

今年のドル円の水準については、多くの識者が111円~119円という110円台での展開を想定していました。しかし、ウクライナ侵攻で当初想定されていた環境は一変してしまいました。今後のウクライナ侵攻の展開は予測不能ですが、長期化の様相を呈してきています。

長期化となれば食糧価格、エネルギー価格などの上昇によるインフレ、インフレ抑制に向けた金融引き締め、そして金利差による円安という日本にとって厳しい環境が続くことになります。

ドル円の水準として125.86円がアベノミクス以降の安値でしたが、一時的とはいえ、この水準は突破されました。今後の米国の金融政策動向やウクライナ情勢などによりますが、当面は1ドル130円をターゲットとした展開が想定され、年内は1ドル128円~130円のゾーンでの動きになっていくのではないかと考えられます。

転載元:月刊暗号資産ONLINE

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